─酒場内、カウンター席にて─>>96グレートヒェン
[彼女の手の甲に唇を寄せると、少しだけ彼女の纏う空気が変わったようです。
どうしたのでしょうか。盗賊のおっさんは嫌い?いきなりこんな気障な事をして嫌がられてしまったのでしょうか。
ああ、だから自分は女性との距離は苦手なのです。
触れて良いのかいけないのか、心の鍵を見つける前に逃げられてしまうのが常なのです。距離感が掴めないおっさんが悪い盗賊の技術のうちに"ハートを盗む"なんてものもあった筈ですが、この男は終ぞその技術は身に付けることが出来ませんでした。
ですが、それで良かったのかもしれません。
その代わり、罠抜けや鍵開けの技術はピカイチなのですから。パーティの魔法使いがそれらに代わる魔法を覚えてお役御免にされたのですけれども。]