本当に、残酷だ。
どうして、俺は人間ではないのだろう。
どうして、彼女はまだ人間なのだろう。
彼女が「こちら」に来れば、また一緒に居られるのに――。
醜く蠢く本心。
「こちら側」に彼女が寄れば、己が経験し続けていた同じ苦しみを味わうことになってしまう。
だから先日それを阻止しようとしたのに。
人は死ぬ前になると優しくなれると言うが、自分はどうやら逆らしい。
己の欲望と欲求しか考えていない男だ。
そんな我侭な男だからこそ、カサンドラと離れたく無い。
ただそれだけの願いなのに、願うことすら許されないのか。]
[やがて己の実体が眠るコクーンの前へ到着する>>81なり、眠ってるの? と声が掛かる。]
カサンドラ……俺だって起きたいさ……。
ずっと一緒に居られると思っていた。
でも、俺はこの通りだから……。
やっぱりダメだったようだ……。ごめんな……。
[聞こえない声で話し掛ける。
クレメンスの時のように反応があれば、と甘い幻想を抱くも、
即座に打ち破られる。
むしろ、それが当然なのだから。
やがて彼女の瞳から一筋の涙が零れ落ちる。
それは室内の光に反射し、きらりと輝きを放つ。]