―談話室―
[そこにまだ、皆はいただろうか。
エルナがいたならば彼女の傍に近づき、伝えておきたいことがある、と小声で囁いて彼女の手を引く。もしいなければ、彼女の部屋へと向かっただろう。
そして、シモンがいたならば――
目も合わせず、すれ違いざまに言い放つ]
……シモンさん。
今の状況は、味方になりすました敵兵が懐に潜り込んでいるようなものです。いつ、誰に寝首をかかれるか分からない。
なのに、食ってかかる相手が狼だという確証を得られなければ疑わないなんて、随分と余裕があるんですね。その態度が悠長だと、甘っちょろいと言っているんです。皆殺しにする覚悟がないから甘いだなんて、僕はそんな事は言っていない。
――そちらこそ、曲解は止めていただきたい。
[そして一度だけ真っ直ぐににらみ上げ、談話室を後にした**]