― ロンリコ北方の山 ―
[ 北の山中は、魔法訓練にも使っていたので、教師達は地理にも明るい。目指すのは、山の中腹の渓谷。そこから南東に流れ落ちる川を辿れば、センテナリオへ向かえる筈だった。]
...さすがに、一飛び、とは、いかない、か...
[ 夜の明けぬうちに出来るだけ距離を稼ぎたいのはやまやまだったが、体力気力はすでに限界に近く、休息を取らなければ保たないと判断せざるをえない。
追っ手のかかることと、獣を避けることを考慮して、休息の場所に選んだのは高い樹上。魔法で折り曲げた枝葉を即席の寝床として、仰向けに空を見上げる。 ]
『お願いします!』
[ 疲れに解けかけた意識の底から、遠い記憶に残る声>>79が浮かび上がったのは、下界の喧騒も知らぬ気に煌めく星が、魔法の授業中には見たことのない輝きを湛えた少女めいた大きな瞳を思い出させたからだろうか? ]