― 回想/沈んだ記憶 ―
[物心ついた頃には、母と二人で隠れるように暮らしていた。
小さな村に住む人々は皆、母娘に良くしてくれたけれど、娘が村の外に出る事だけは良しとしなかった。
何故と問うても、『それがお前のためだから』としか教えてもらえず、それへの疑問はずっと抱えていた。
平穏だけれど変化のない日々、それに初めて見る彩りを添えた流浪の民。
彼らと共に旅に出たい、と言い出した娘に周囲は皆、困惑していた。
けれど、最終的にその願いは聞き届けられて。
一つ所に隠れ住んでいた母娘は、留まらぬという形で隠れ生きる道を選んだ]