[知己との再会を経て、やがて劇が始まれば]
――すげぇ。
[芸術的な物の良し悪しは分からないが、そんな自分でも圧倒される。
荘厳な歌曲は、おそらくあの作曲家の書いたものだろう。
それに乗せて紡がれる演技は、見る者を引き込むようで]
おう、カレルの奴も出てるのか。
しかも結構、重要な役どころじゃないか。
[その時、隣席の彼女がこちらを見ていることに気付く。
折しも舞台上では、主人公がヒロインに愛を囁くシーンで]
……、。
[思わず無言で、その手を強く握る。
言葉にはしなくとも、きっと思いは伝わるだろうと確信していた]