国は馬鹿じゃねぇよ。……いや、敵国の工作員? をこうやって侵入させてんだから、ある程度は馬鹿かもしんねぇけど。
でも、少なくとも。俺がこの国を裏切ったと知られれば、家族はどうなるんだ。
ビスマルクの開発者達の不審死が国の謀殺なら、うちの家族くらい簡単に始末するだろ。
[そこまで言って、父の死の国からの謀殺説への否定材料も得た気がした]
……で、どうすんだよクロトフの工作員さんよ。仮にもローゼスの軍人である俺が、お前を見逃すと思うか?
[低く落とした声で対峙すれば、澄んだ色の目を持つ友人は小さく笑い、残念だとこぼして。
それから彼の軍服のカフスを、俺の足元に向かって投げた。
その拍子でカフスの合わせが緩み、中に隠されたクロトフのエンブレムが現れたのだ(>>1:561)]
『自分の始末くらい、自分でするから。……預かっててよ、それ』
[小さく笑う友人だったスパイの顔は、俺と同じ様に青ざめていた。
任務に失敗した事よりも、俺の表情を見ての変化だったと。
そう思うのは、俺の願い事なのかもしれない]