[ ひとりに戻り、廊下を行けば、先程記憶から呼び起こされたあの船”のことが思い浮かぶ。
この宇宙の広さを考えるなら、自分が生きている間にもう一度会える可能性はあまりに低い。
そもそも、航海を終えて養父の顔を見ることすら、ないかもしれない。
それでも折に触れては思い出し、懐かしむ。
彼らは今も、この宇宙の何処かを、あの懐かしい船で駆けているのだろうか。
一番に思い出されるのは、船長の顔。
貨物に紛れこんでいたそれ”の正体など、荷物の経路を調べればすぐに分かったことだろうし、何処かに売り払うことも、用途通り使い潰すことも、面倒ごとを背負いこんだと宇宙空間に放り出すこともできただろうに、
あのひとはそうせずに、こんな自分を船に置いた。
多分――当時、父親、という概念を知っていたなら、あのひとのことを父親のようだと思っていたかもしれない。
実際、船長がどこかで拾ってきた娘さんとのやり取りを見ながら、親子”というのは、ああこれか、と得心したようなものだったから――そういうひとだった。]
どうしてっかなあ……
[挨拶も出来ずに船を離れることになったのは、このポンコツの身体のせいだ。
九年、八年、それくらい前のことだったか。
船内でいきなり倒れ、目が覚めたらそこはもう、あの船ではなかった。
どこかの惑星で下ろされて、土地の医者に託されたのだと知ったのはその少し後のこと――いや、今おもえば 、海賊とつながりがある軍医って、うちの養父(オヤジ)何者だよ、と思わなくもないのだけれど。]