[転校という急激な変化に、衝撃を受けなかったわけではない。
けれど子供は順応が早いものである。
新しい土地、学校でもすぐに友達ができた。目まぐるしい変化の中でも、充実した日々を送っていたと思う。
けれど、ふとした瞬間。
小学生のあの頃を思い出すのだ。弟のように可愛がっていた、炉の姿を。
高校進学と、父親の再婚を機に。それらしい理由をつけて、単身、小学校の頃に居た街へと戻ることを望んだのも。
思い出の中にずっと、燻っているものがあったからだ。
――――ただし。
年月を経て美化されかけていた思い出は、程なくして現実をつきつけられ無残に散ることとなったのだが。]