[卒業当初、ディークが配属されたのは近衛隊である。
未だ平和の気配が揺らぎを見せていなかった六年前、
近衛は主に儀礼と首都の治安維持を任務の主としていた。
士官学校卒業後、彼がシュヴァルベへと赴いたことはない。
ただ時折、市街地のある家へと荷物を送った。
差し出し住所の分からないようされた荷には、
ただ「ディーク・ルーデン」と、差出人の名が記されている。
中身は焼き菓子である。
ディークが部屋でのみ良く食べていた田舎風の焼き菓子は、そのまま、元同室者のベリアン・アリーへと届けられ続けた。
荷にはたまに、石やら妙な雑貨が混じる。
何となくディークが見つけたもので、菓子の合間に入れられてある。
大した手紙も添えられない届けものは、
ベリアンの卒業まで2年間きっちりと続けられた]