[選択には後悔しないと自信を持って言えても、大切な人を奪われたリゼットにはどんな言葉をかけたらいいか分からない。パメラを談話室の床に横たわらせて、手を胸の前で組ませたあと、談話室を掃除する間別れの時間を設けるだけで精一杯だった。]
……。
[床の血を一心不乱に拭きながらため息を漏らす。
今まで殺す相手に家族がいるとか、大切な人が存在するとかは極力考えないようにしてきた。自分が生き残りたいなら、一瞬のためらいでも禁物だ。それがために命取りになったら後悔してもしきれない。
しかしこの期に及んでも、ジムゾンだけに教えた自分が大切な人を作らないようにしていた理由が、死ぬ気で敵の命を奪う覚悟ができなくなるかもとの危惧の表れだとは、まだ気付いていない。
それでも、互いを大切に思っているように見えるリゼットとパメラが羨ましかった。]