『家を出ずるより帰らじと思えばまた帰る、
帰ると思えばぜひ帰らぬものなり』
……。
…博識だな。随分と古い将の言葉だろう。
酔っている方が知的に見えるな、ミリアム少尉。
[物言いに遠慮が無くなってくるのは酒の席だからこそ。
そしてグラスに唇を長くつけたのは、離れられない実家という台詞が、胸に刺さるように思い至る為。
確かに恵まれていた。おそらく幼馴染も、自分もだ。
一時とはいえ、出会えて、支えて、二人で同じ星を見るように、同じ未来を見られたのだから。
グラスを回すとからんと綺麗な音が鳴り、姦しい席に添えられた花になった。]