―廊下―
[全速で駆けるが、彼女の気配は薄れていく。霞んでいく――]
―――――…ッ。
[するりと男の姿は黄金色の狐へ変じ、更に速度を増した。
別れた二人がどうしたかを気にする余裕はなかったが、
床には爪傷が残り、男の痕跡を辿るのは容易であろう。
――何故、自分が此処まで必死になっているのか。
元来、人当たりは良くとも、薄情であると自負している。
面倒事は苦手なのだ。苦悩より享楽に逃げた方が楽で良い。
辛い想いはもうしたくない。 したくはない。
ならば、何故]
…………。
[部屋の前へ辿り着くと同時、人の姿へ戻り着地する。
やはり既に少女の血は感じない。それでも何か手がかりは、と、そのまま部屋へ押し入った]