― 数日前・首都カルボナード ―
[使節とはいえ、ここは敵国の只中であるに同然だろう。
いかに礼を以って遇されるとはいえ、ひとつ間違えば無事帰れるかは分からない。
だが青年は、そんな環境で寛いでいたようだった。
さて肝が据わっているのか鈍いのか。
前者であろうと、立ち上がる青年と視線交わしながら思う。]
────、ふ。
[笑みが零れたのは、どこか彼の主たるアレクトールに似た面影を見たためだ。10年前、男はかの皇帝に会ったことがある。
彼は未だ皇帝ではなく、14の少年ではあったが。
活発な目をした、意志の強そうな少年であったと記憶している。]