―宿前―
[しばらくの間、疑心暗鬼が宿内で広がっていく様をただ傍観していたが、ふと宿の外へ歩を進める。特別な理由はない。]
――生きていることそのものが罪、か。
[エルナの言葉>>88が頭を過る。如何にも人間らしいエゴだ。]
――人間は、どうしても自分達を特別視したいらしい。ただ単に、環境に適していたからこそ繁栄してきただけだというのに。
そして今、村人同士で疑心暗鬼に陥っている人間と、村を滅びへ導いている狼とでは、どちらが環境に適応できているのだろうか。崩れた環境にも気が付かず、未だ人間が特殊であることを信じてやまない。憐れなことだ。