――昨晩:自室― ……ニクス、ただいま。[野生の狼のいそうな、森やその近くを中心に見回りを終えて、宿に戻れば。丸まって眠っていたニクスが、がばっと起ききあがり、嬉し気に尻尾を振って迎えてくれる。白い犬と、頬を合わせる、ただいまの挨拶を交わして。ふるり、ふるふる…っ。勢いよく、月色の毛並みについた雪を払う。久しぶりの獣の姿に、すぐに人間に戻る気にならず、暫くは薪ストーヴの側で、雪に濡れた毛を乾かすように、緩く丸まり]