[此処だけでなく、いくつもの集落が同時に襲われたなど不自然だ、という声は郷の内外問わずにあった。けれど、それに対して明確な答えを返せるものなどあるわけもなく。何故を問える相手も無く、ただ喪った者、失ったものを思うことしかできない日々を重ねるしかなかった。唯一の救いは、イェンスの亡骸を、だれも目にしていないこと。確定していない以上、きっと生きていると、信じていられることが出来たから。その救いが、まさか最悪の形で翳ることがあるなんて、思いもしていなかった]