― 魔界温泉郷 ―
[視界の反転。見えていた風景が一瞬にして暗い空へと強制的に変わり、体が下へと落ちる感覚]
―…っ?!
[落ちる感覚は、刹那。すぐに衝撃とともに、水飛沫があがる]
…っ、…!
[驚きの声は声にはならず、口から空気の塊が泡となって上がるのみ。慌てて腕が水を掻こうと動くものの片腕にしっかりと抱えたままだった小さな黒犬を放すことはなく、多少手間取りながらもなんとか顔を水中から出すことには成功した]
―ぷはっ!げほ…
[少しの間、咳き込んで。狭い水場だったことが幸い、岩場に片手をつく。なんとか、そのまま水から体を持ち上げようとして――]
えっ。
[軽い力。だったにも関らず、身はふわりと水から飛び出した。飛び出したというか…空中へとふわりと浮き上がる]