[ 大抵の事には耐えられる程度に鍛えてはいるものの、寒さというのには、やはり慣れない。武器も持たずに腰布一枚というのも、だいぶ、頼りない心地だった。 ]
......これは服のようだな?
[ 建物の中に入ると、ずらりと並んだ棚の中の籠に、なにやら青い文様を染め抜いた布の着衣らしいものと細い帯のセットが畳んで置いてあった。いくつも同じものを並べてあるところを見ると、個人のものというよりどれを使ってもいいものに見える。
どちらにせよ選択肢は他になさそうだったので、一枚拝借することにした。
着方にそう戸惑わなかったが、襟は逆で、ついでにだいぶ、足がはみ出ているという残念っぷりだ。 ]
これは、履物だな。
[ スリッパもなんとなく履き方は判った。ぺたぺたとつんつるてんの浴衣を着た大男が湯殿から廊下へと歩み出す。* ]