― 回想・黒エルフと ―
[そのエルフの噂は、森の奥の奥の神樹にまで届いていた。
"ダークエルフが生まれた"
最初の一報から、その後の顛末まで、森の木々や小鳥が囁いていたのだ。
そんな噂話とは別に、一つの思い出がある。
それは勇者がこの世に誕生するより前のこと。
神樹の傍らに迷い込んだか道が繋がったか、変わった毛色の幼子が現れた。
物珍しい客と言葉を交わし、少しだけ遊んだ別れ際]
みなには内緒なのじゃ。
[そう言って、神樹に宿るヤドリギの実をひと粒渡した。
神樹のヤドリギは赤い宝石の実をつける。それは持ち主の身を守る力を持っていた。]