[身を乗り出し、愉快なことになっている百面相を見上げるように、ぐっと顔を近づける。>>49>>50
丁度飲んでいた果実酒よりも、さらに深い赤に湛えた瞳が、挑戦的な色を帯びる。
けれど、向かい合った男の長めの前髪の下、覗き込んだ瞳に灯る淡い光に、
ふと――…
ほんの一瞬だけ、何かを思い出すように、表情が歪んだ。
微かな戸惑いは、すぐに仕舞い込む]
へえ、あんたそういう趣味か。
まあ、折角の縁だ。楽しもうか?
[自分の容姿のことはよく分かっている。
口さえ開かなければ……なんて無駄……と、複雑そうに言われるのは日常茶飯事。
表情を浮かべずにいれば、氷雪めいた銀糸の髪も、色の濃い赤目も、端正な冷たさをもって映ることだろう。]