― 花の咲く草原 ―
フルール、今日は競争してるんじゃないから急がなくてもいいよ。
[ 馬の蹄がようやく隠れるほどの若草が、通り抜ける風に靡いている。
厩舎から借り出した月毛の牝馬の背に揺られながら、ゆっくりと草の海を渡る。 ]
――うわっ!
なんだ、タンポポか……。
腹減った? 少し休むか。
[ 不意に足を止め、草むらに鼻先を突っ込んだフルールのせいで危うくつんのめる所だった。
笑って、馬の背から滑り降りる。
街道の目印に道沿いにいくつか打ち込まれている杭のひとつに馬を繋いで、そばの岩に腰掛けた。 ]