[獣が崩折れるのを確認すれば、青年は相手を見下ろして舌打ちをした。動きに対して目線の反応はあったというのに、妙に動きだけが緩慢だった。それを手加減と捉えた青年は苛立ちを隠せずにいた。]
……ふん、手加減なんてしやがって。
いや、手加減せざるをえなかったのか?
バケモノが来ているんだな、此処は。
[腹立ち紛れに、神父のような服を纏った男を絡めとる蔦をざくざくと切り刻んだ。男に意識はあったかどうか。男の首元の傷を手持ちのハンカチで手当してやれば、一般的な吸血鬼より回復が遅いような気がして僅かに首をひねる。
そうして用事を済ませた青年は、側に倒れている先程まで拳を交えた相手に向き直る。]
さぁて、別に腹は減っていないが、
――まあ、勝者の特権だ。ひとくち、貰っておこうか。
[そう言って舌なめずりをした。]