[ 少なくとも、バルタザールが「その名前で生きていた」15年間に、そんな風景を見る機会など全く無かった。 記憶喪失のまま、教会で保護された少年は、そのまま教会付属の孤児院で育ち、剣を習い… 癒しの力を持つことはできなかったが、教会を守る修道騎士として、今、この場に赴いている。後悔はない。恐れもない。瘴気に対する耐性の強さで、人々の盾となる道ができた事を誇りに思っている。 それでも、目の前に広がる寂寥とした風景は、心の奥底から魂の揺さぶられるような、不思議な気持ちを呼び起こさせた。]