―― 回想 / 第二エリア・バー ――
[横合いからかけられた声に顔を上げる。>>49
こちらにひとが近づく気配は察していた。
カウンターの隅、他に人影はない。
何か用があるのだろうが、心当たりはない。
自然と隣にかけて話しかけてくる様子は、初対面にしては距離が近いもので。
一人で飲むのも味気ないところだったので、話し相手が出来ることは歓迎だった。
深く考えず、勧められるままに酒など飲みながら。
ややあって、何かの加減でこちらがはっきりと声を出したときだったろうか。
目の前の男の気配が、なんだか、面白いくらい動揺した。>>49
ああ、と事情を察する。
このようななりをしていれば、間違われたことは一度や二度ではない。
男の勘違いに気付き、吹き出したくなるのをぐっと堪えた。
心中お察しする、としか言いようがない。]