[崖に寄り添うように建つ簡素な小屋が、その人物の住まいだった。
その佇まいに一層不安を募らせながら、扉を開く。
途端、精霊石の原石だろうか、淡い蒼色の光が幾つも目に入った。
その奥にある人影は二つ。
一つは歳のわからぬ男性の、そしてもう一つは自分と同じ年頃の少年のもの]
『ようこそ、お嬢さん。
私が君に治療を施す、精霊師にして精霊石の研究家だ。
そして彼が、弟子のシュテルン』
……はじめ、まして……。
東のヴォルケンシュタイン家末子、マリエッタ・ヴォルケンシュタインですわ。
[この名乗りに何か意味があるのかと、またしても失意のままこの地を去ると予期していた少女は、顔を上げぬまま挨拶した。
それから精霊師に促され、半信半疑のまま椅子に座り彼に身を委ねる。
幾つかの診察の後、蒼色の石をかざされ、術を施されて]