― まだ平和な頃のおはなし ―[姿見の前で、神妙な手つきで胸元のリボンの傾きを直す。まだ幼さの残る、背の低い娘だ。澄んだ翠玉の瞳を期待と緊張に膨らませながら、新品の服に身を包み、背筋を伸ばす。紺色のリボンの端に手を添えて、きゅ。と結び目を深くしてから、深呼吸をひとつ] ん、ん。これで…ばっちり、だよね―― …っとお。[緊張でこわばっている頬に気づいて、パンと軽く頬を叩いた]