[僅かに赤い月明かりが、煌々と照る森を、褐色の彼>>93と走る。(こんなとき、咄嗟に飛び出せるこの異国の兎を、ルートは優しいと思う。)
カラスたちの耳障りな声に、やかまし、とぼやきながら。]
[ブナの群れを抜け、スズランを鳴らし、やっとローがカスパルを捕まえる。
誰とは言わないが、ローの言おうとするところを理解して、こっくりと頷き。]
レトがカスパル君を避けてたんって、ただ嫌いやったから、だけとちゃう気がすんねん。
カスパル君を傷つけへんように、っていうか…。
そやし、ヤケになったら…多分、レトも悲しむて。
[な、とローに同意を求め、ふたたびカスパルをなだめ。
カスパルは、どういう心境でいただろうか。]
[カスパルの気が済むまで傍にいたなら、ローと二人で、彼を連れ帰っただろう。
途中、同じく小屋を出たマレンマに出会えたかどうかは――。**]