── 宿・玄関 ──
[シモンが到着し、ディーターが応対した>>87>>91
そのすぐ後のこと、激しく扉が叩かれた。
駆け込むように兄妹が二人中に飛び込む。
吹き込んで来る凍てつく風に抗って、扉を閉じる力は強くなる。
そうして大きく音を立てた後、兄に被らせたフードを下ろし、身体の雪を払う。
その後に自分にも同じことをして、漸く一息ついて。]
……やあ、おはよう。
酷い目にあったな、本当に。
[誰かと顔を合わせればそう口にした
苦笑しながらの挨拶は疲れた声。
それすらもこの状況では呑気だとは、知る由もなく。
非常時はゲルトを談話室に一番近い1-2号室に
宿が避難場所とされているのと同じく、六年前に村の決まりとして定められた。
何も知らない妹は、話をするよりも先に荷物を抱え直し
まずそこに兄を連れて行こうと足を踏み出す。]*