[大天使───その化身は、微笑みをもってそれに応えた。 案内を乞うことはなく、教会へと足を踏み入れる。 その傍らに影の姿を認めれば、ナネッテは僅かに顎を引いた。 労う意を以て一度影へと視線を送り、再び顔を正面へ、 人々の中心にある青年へと向ける。] マレンマ。[大音声ではない。 さり気ないほどの呼び声が、救世主たる青年へと投げられた。 名を問うことも確かめることもない。 見誤ることはない。 …───かつて、この腕に抱いた愛し子を。]