……あー……。
[いつも持ち歩いてる簡易医療器具入れの中から、カットされた脱脂綿を取る。指先でくるくる丸め、両耳へ。
まだ酒を飲み終わってない。
もうちょい、飲む。
酒場から離脱するものを横目に、ぐいと酒を煽った瞬間。
相変わらず見事な鼻声が聞こえてきた。
こっちは聞き始めて10数年。対処にも慣れた。
慣れと耳栓で何とか、まだ酒は飲める。]
またなー。
[ひらひらと、去るヴィクトリアの背に手を振る。
酔っ払いつつ、その後の喧騒や飲み比べをのんびりと眺めていたが、とりあえず医者の出番はなさそうだと判断した。
最後までタクマ相手に頑張っていた、青年の顔だけはぼんやりと記憶した。]**