俺は……。[名乗っていいのかな。一瞬躊躇したが、目の前の自分にそっくりな青年がここを「風花の宿屋」と説明したこと、自分と同じ名前なのだが、苗字が違うことから、なぜだかすとんと理解できた。(俺、じゃないんだ。違うヨアヒムなんだ)そう思った途端、目の前の青年に対して好奇心の方が勝った。姿を変じて見せたら目の前の青年がどんな反応をするか。そんな考えを浮かべるなんて、自分の正体を他者に知られまいとしていた頃のかつての自分が知ったら驚いていたかもしれない。]