[ゼファー兵の象徴ともいうべき剣も盾も持たず、たいした鎧も着けずに平服で行ったのが功を奏したか、慌ただしい空気の野営地の中をさほど気にかけられもせずに進めた。一度見とがめられたが、「義勇兵の持ち場は向こうだぞ!」と言われただけだ。槍の穂先が鉄だと気づかれれば偽装もバレるだろうが、今は袋を掛けて隠してある。そうして、物見台の下までたどり着けば、適当な小石を拾って書き付けを結び付け、上に向かって放り投げた。書き付けには『来た』とひとこと書かれている。*]