― 廊下 ―
[羆の追跡を知らぬ人間の女性は、
時折振り返りながらも小走りに先へ進む。
彼女もまた、出口を探しているのには変わらない。
廊下の先の者たちに気づかれているとも知らぬ彼女は、
思わぬ近さでふたりの男女を見つけて立ち竦んだ。
だが、相手の1人がまだ若い女性と見て
少し安心したように、おずおずと話しかける。]
『あの、お二人もここに攫われてきたのですか?』
『出口を探してるんです。
早くしないと、吸血鬼に襲われてしまう…と……』
[切々と女性は訴える。
しかし、男の方の服が血に濡れていることに気づいて、
怯えた顔で数歩後ずさった。]