― 5年前/ロンリコ湖畔 ―[自分の名を呼ぶ声>>60がして、はっと顔を上げた。 対岸は遠く、顔を知らない相手を見分ける術もないのだけれど――確かに、そこに居る、と感じられた。 いつもより弾んだ響きに、こちらも緊張より高揚が上回る] 今からそっち、行くね……![声と共に手を振った後、大きく息を吸い込んだ] 天を翔けるもの 吹き渡る風よ 我が身を運べ 眼差し導くままに――![父に教わった少し古い呪歌で、己が身を対岸へ飛ばす]