>>90―城内―[年若き吸血鬼の背後にふと、朧な影がぼう、と現れ出た。]――嘉(よ)く来た、同じき血の末裔(すえ)の末裔よ。[石壁と床に玲瓏とした声が響く。青年が振り返るなら、そこには銀の髪と真紅の瞳が見えるだろう。少女は艶然と微笑み、歓待の意を示す。]人草の世はいつも変わらぬものだの。見える度に装いが変わる。我ら以外に、変わらぬものなど有りはせぬとはいえ、面白きこと。