― 回想:3年前・コリルス ―
『お嬢様、着きましたよ。コリルスです』
[馬が足を止め、御者が馬車の扉を開けて手を差し出した。
少し遅れて、はい、とか細い声で答え立ち上がる]
[生まれて初めて領地を遠く離れ、西の海に面した街を訪れた。
しかし踏み台を一歩一歩降りる顔は晴れない。
不治の病と宣告され、医師にも匙を投げられて、挙句このような西の果てへと連れて来られたのだ。
次に自分の体へ治療を施す人物は、医者ですらないという]
『申し訳ありませんが、少し歩いて頂きますよ。
何分、街の外れなものですから、馬車で進めるような道もないようで』