――へぇ、驚いた。貴方、ただの都合の良い男だと思っていたのだけれども。
[「――視えているのね」なんて言ってくるものだから、それが何について言及した言葉なのかは考えるまでもなく、ただ頷いて肯定する。
彼女は「そう。」と自分から聞いてきた癖に興味なさそうな反応を見せ、用意された食事を咀嚼し始める。]
――随分と現実的な料理ね。
[彼女はリスが木の実を咀嚼するように、小さな口へと食事を運んで行く。
自分の料理を現実的だと言われたのははじめてのことだった。むしろ、多くの客は望み通りのものが出てくることに驚いたりするものだった。]
――期待以上に期待通りなのよ。
[などと、聞いてもいないのに理由と思しきものを告げてくる。]
――ありがとう。美味しかったわ。
[彼女は全て食べ終わると、お礼を言って「こっちで良かったかしら?」などと聞きながら容器を片付け始めるのだった。変なところで律儀である。
容器を全て片付け終わると、彼女は不満そうに、無言でいる己に大して所謂じと目というやつを送ってくるのだった]