[倉庫や寝室の扉は不用意には開けないが、道中に使えそうな物品があれば、密かに隠して置く事とする。洗濯室からは洗濯物を干す用のロープを調達した。――こんな事をしていると、まるで子供の頃に兄弟で遊んだゲリラごっこでもしているようだ。高い棚の上から転落して頭に怪我をした時には、休暇で帰って来た父にこっぴどく怒られたのを思い出す。……そんな頃もあった。兄に繋がる記憶なのに、思い出しても不思議と哀しくはなかった。やがて医務室が近づけば、男は少し離れた壁の角に身を隠し、様子を窺う事にした。]