[ 《氷雨》からは、長弓の射程を活かした斉射が、ティルカン軍中央へと放たれる。
何か仕掛けるつもりのレトたちが戦場のどこにいるかは把握できていないが、さすがにそこにいないのは自明だ。
最後尾の工兵隊《双六》は、装填した箱型連弩を街道の左右と後方に向けて待機していた。
ティルカン弓騎兵が射程にまで回り込んでくるのなら、水平撃ちの
タイガとその周囲の《狼牙》は、まだ動かなかった。
散開して陣を大きく見せてはいるが、ナイジェルの軍団がいない分、現時点で兵数は互角以下。
馬蹄の響きに負けじと手持ちの武具を盾にぶつけ、揺るぎない鼓動のごとき音を揃える。*]