[思い返してみると、彼は昔から聡かった……その一言に尽きる。
知識もさることながら、人の心情を読み、添うことに長けていたように思う。
花言葉も図鑑を持って行き、得意げに話したりもしたけれど。
それは単に、彼が聞いてくれることが嬉しくて、会話する声と言葉を聞いていたかったからかもしれない。
それがどこかで役に立っていることを祈りつつ。]
ふふ、ローらしいわ。
……文句言ってる姿が目に浮かぶもの。
えー、私だって守られるだけは、嫌よ?
[きっぱりバッサリ規則を一蹴にする様子が思い浮かんで、ちょっとおかしくなった。
そして、聞こうと思えば聞けたにも関わらず、事情を察して軽口を叩いてくれたことに気付き、それに乗っかるようにだだをこねる。
脅威にはならないだろうと見定められているとは知らず。>>54
こちらは、初めに抱いていたほんの、ほんのわずかな警戒心は知らぬ間に消え失せていた。
……そう、もし仮に、目の前の彼が、唐突に牙を向いたとしても。
自分は、咄嗟に気付くことが出来ないだろう。]