― 東屋を去りゆく前の ―
[ ある意味誘い受けともつかぬような
心中の昏い澱みを曝すような
言葉>>37を最初に返してしまったのは、
なぜ、だっただろう。
誤魔化し通すことも出来たのではないか。
…あるいは知らないと言い張ることも。
話して欲しいのだと
駄々じみた問いを投げられたところで
躱してしまえばそれでよかったはずなのに。
渡る綱を更にか細くするような
此れまで作り上げてきた"画家"の虚像を
自ら壊してしまうような受け答えを
なぜ――と、この時疑問に思うことはなかった。
表面上の平静を取り戻しはすれど、
胸中には動揺の潮が激しく渦巻いていた為に。 ]