― 夜 ―
[都会的な光がない、美しい夕暮れに目を奪われているような余裕はなかった。
日が暮れる前に、周辺の地理をできるだけ頭に叩き込みいざという時の逃走経路もいくつも用意している。
川から草原、草原から森林の中に入り木立に紛れ。
木の上に逃げれば獣からは身を守れるが、それではイザ見つかった時に逃げ切れない]
夜目が利く相手なら……スタングレネード使ってもいいかな…。
[手製の削ったマグネシウムをゴムホースに突っ込んだだけで作った閃光弾もどきを握り締める。
これを使えば相手が目を痛めるかもしれない、という危惧はある。
しかし、自分の持てる力を使い、全力で課題に取り組んでいるほうが彼は喜んでくれる気がして。
もし彼が来たら、これで時間を稼いで逃げ切ろう。
彼にとって自分はあまり出来のいい訓練兵ではないかもしれない。
少しでも彼に認めてもらいたい。そして、彼が所属する空挺部隊の一員に迎え入れてほしい。
そう思いながら、緊張の一瞬を少しずつ、少しずつ、感覚を研ぎ澄ませながら過ごしていた*]