[視線を文庫本へ戻しながら投げた言葉に、むっとする気配などどこ吹く風である。>>56
大袈裟なアピールを横目でちらりと見やり。
口元を本で隠したまま、欠伸を繰り返していれば目尻に涙が浮かんでくる。
不意に浅黒い指が伸びてきて本を倒され、間一髪、中途半端に開いていた口を閉じることに成功した。
横を見れば窓から此方に向きを変え、けらりと笑う顔を半目で睨み。]
そうだよ、寝不足なんだ。
昨日急に用事が入って、荷造りする時間が遅くなったからな。
眠れなかったって、遠足前の子供みたいなことするか。
……ああ、でも。
[人を指差すな、と炉の手を叩き落とし。
明らかに余計な一言を、呟いた。]