[あるいは、本当にあのとき、出会ったことがあったのかもしれないな……と、そんな推測を、口にすることもなく。
恐らくはその心にある何かに触れて暖めることが出来るであろう、優しいその手が傍らにあることを見届けて。
さようならの代わりに、座標を告げ。
やがて来るそのときを、心のどこかで知っているがゆえに、
語られる欠落の中>>36、それでも残された温もりの残滓を心に留めて、手探りで触れていくような、その姿に。>>33
何故か、“優しく”穏やかな銀の揺り籠――檻を、見たようにも思った。
いつかそれを、もう自分ではない自分が、無遠慮に揺らすことがないように、と
最後に、そう願い、
非常階段の、扉を閉める。]*