

[吐息の混じる距離で、ふと逸れた眼差し>>74
自分に関してはとびきり狭量な夫の意図を察しながらも、
両手で頬を包みこちらを向かせ、何時かは否定した
感情の欠片を覗かせる]
や。 余所見しないって言ったでしょう?
[僅か躊躇い、さっきも大丈夫だったのだからと口接を深くする。
口腔へと溢す吐息、身の内に湛えた白銀を熱と換え、
搦め捕る舌で喉奥へと滴らす。
誓約を叶えた後に残された、治癒の力を初めて彼に施し]
――…ねぇ。早く、元気になって?
それで、いつもみたいに、抱き締めて。
[彼以外の誰にも聞かせぬよう、潜めた声を唇に注いだ*]