まだもう少しの間、お前とは会えそうにないと思っていたけれど…[憂いを含む声で鳴くと、灰鋼色した竜は折り曲げた手足を伸ばし、立ち上がり大きく羽ばたいた。体躯に絡んだ蔦は蜘蛛糸のように切れ、埃のように土と苔と草が舞う。結界を関係なく行ききしていた、小さな者より更に小さな物たちが、突然の竜の挙動に慌てふためくようにしてその場から逃げてゆく。竜はそれらを踏みつぶさぬように注意しながら、もう久しぶりに動かす事のなかった被膜を張り羽ばたき地を蹴りあげて、かつての住処であった空へと発った**]