[その後、店へ連れ帰るとスープとパンを振る舞った。「――相も変わらず現実的な料理ね」と言いながらも、彼女の見せる笑顔は瞬く星の煌めきのようで、己の乾いた心も水源を得たかのように、どこか安らぎを覚えているのだった。
彼女についていた血はやはり彼女のものではなく、つい先程喰らったばかりの人間のものだとのことだった]
[食事が終わると、彼女は無風状態の水面のように、打って変わって静かになった。
それからしばらくの間は、無言の状態が続く。彼女は何も望んでいなかったし、こちらから一年半の空白の理由を聞くこともなかった]
――聞かないの?一年半も、ここに来なかった理由。
[沈黙を嫌ってか、あるいは気まぐれか、彼女は水面に表れた波紋のように、ぽつりと声を漏らす。]
聞いて欲しいの?
[尋ねると、彼女は「――そうね。そうして頂戴」と、やはり弱弱しく答えてくる。]
――私ね。本当はもう二度と貴方に会わないつもりだったの。私の特異性は知っているわよね?
――私の願いが、貴方を欲しがっているの。貴方の、その機械のような呼吸を止めてしまえと。貴方の、その処女雪のような身体を貪り喰ってしまえと。