[胃が上がる。
目が回る。
こんな事、ここにいる誰に話せるだろう。
影を見つけ、告発した母がどうなったか、思い出したばかりだ。
話せるとしたら……エルナくらいだが、生きている事が罪という言葉>>88が胸に刺さる。
男は、彼を異端者として、彼を尋問する気も、処刑する気もない。同時に、それをさせる気もない。
ただ、友として話をして、それが自己満足だったとしても、おこがましくても、救えるものならば救いたかった。
ふらつく足取りで談話室をでて、その姿を追う。
しかし、宿を出てしまったのかその足取りは追えず、
……ただ、誰かが来るまで、宿の前で立ち尽くす。
地吹雪が上がり、男の姿が霞んだ**]