[ 目を逸らそうとすればするほど
揶揄うような笑い声が耳に障る>>86
無くしてしまったもの
思い出さなければと唇を動かして]
―――ッ……
……私、の名前……は
[ ひゅうと喉が乾いた音を立てる。
神から授かった大切な名前
穢されてもなお残っていた自分を象徴するもの
何よりも大切なはずのそれは]
わたし、の 名前……
[ その先はやはり続けられない
浮かぶのは目の前の彼の名や
先に魔族に捕らわれた仲間の名前ばかり
自分自身を失ってしまったような感覚に
再び唇を噛み締めれば、微かに鉄錆の味がする]